川崎市都市憲章(条例)原案
川崎市都市憲章起草委員会(1973年2月7日)
 
前文
 わたくしたち川崎市民は、主権者としてともに力をあわせ、平和と民主主義を基調とする憲法を暮らしのなかに生かし、平和のうちに生存し、良好な環境のなかで健康で文化的な生活を営むことを求めすべての市民にゆきわたる福祉を追求し、互いに自由と人格を尊重しあう個性ある市民社会をつくり出すだめ、この都市憲章を制定する。
 現代の都市は、物質文明の向上を背景として生活の利便を増大した反面、人間と自然の結びつきを破壊し、また人間同志の暖かい心のふれあいを奪い去りつつある。わたくしたちの新しい都市は、失われた自然をとりもどし、疎外された人間関係を再建し、真に人間らしい営みを享受できる共同生活の場となるべきである。そこでは、こどもは夢をもち、青年は希望に満ちあふれ、老人は生きがいを感じ、また心身障害者など恵まれない人にはいたわりがある、明るい人間生活の環境が確保されなければならない。
わたくしたちは、この川崎市を青空と緑のもとでともに働き、いこい、真に市民の心のふるさとと呼べるにふさわしい都市によみがえらせるため、人間と自然の融合をはかり、文化の香り豊かな風格と魅力をもち、ほのぼのとした市民の心がこだまする都市として創造していくことを決意し、ここに全市民の名において、川崎市を「人間都市」とすることを宣言する。
 この都市憲章は、市民が市長、市議会議員等と一体となって、人間都市を実現するための規範である。この規範のもとで都市運営にあたる市政は、人間尊重を基本にし、市民の生活を最優先に志向するものでなければならない。
 わたくしたち川崎市民は、この憲章の制定を契機に、世界に誇りうる市民世代連帯による協同事業として人間都市川崎の都市づくりに全力をあげ、新しい都市文明の創造にむかって前進することを誓う。
 
第1編 平和・市民主権・自治(都市存立の基礎要件)
第1章 都市の平和
(平和権)
第1条 わたくしたち市民は、正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
(平和都市の建設)
第2条 わたくしたち市民は、あらゆる機会を通じて平和都市の創造と建設につとめる。戦争を目的とする施設、平和に反する施策は認めない。
(国際都市提携)
第3条 わたくしたち市民は、平和を愛するすべての国の都市および市民との相互交流と提携をはかり、平和に寄与するようつとめる。
 
第2章 市民主権自治
(市民主権)
第4条 わたくしたち市民は、川崎市の主権者であり、都市づくりの主体である。
2 わたくしたちは、この原則に基づき、つねに市民としての意識の高揚に心がけ、市政に対し積極的な関心をはらい、これに参加するようつとめる。
(自治権)
第5条 わたくしたち市民の自治権は、わたくしたちの基本的人権であり、かつ都市の自治権は、地方自治の本旨に基づく固有権である。
2 市民および市は、自治権を不当に侵害する行為に対して抵抗する権利を有する。
(自治権の確立・拡充)
第6条 わたくしたち市民は、自治権の確立・拡充につとめ、川崎市を名実ともに民主的な自治都市とする。
2 市民および市は、自治権の確立・拡充のため、つねに一体となって、かつ他の都市等と連携して、最大限の努力をはらわなければならない。
(主権者としての市民の権利)
第7条 わたくしたち市民は、次にかかげる権利、その他主権者としての権利を有することを確認する。
@選挙権および被選挙権
A直接請求権
B住民投票権
C住民監査請求権および住民訴訟権
D市の提供するサービスをひとしくうける権利
E市の施設をひとしく利用する権利
F市の財政状況を知る権利
G請願権
H陳情権
(知る権利)
第8条 わたくしたち市民は、川崎市の主権者として、つねに市政の実情を知る権利を有する。
2 市長、市議会議員その他市の公務員(以下「市長等」という。)は、つねに市民に対し、具体的な手段方法により、市政の実情を知らせなければならない。
3 市議会の会議、議事は、公開が原則である。市長は、市民にあらかじめその日時、議案等について知らせなければならない。
4 市長および市議会は、市の条例・規則集、予算書、決算書、議会の会議録、財政状況の報告書、公報、市勢概要、統計書、都市計画図書その他市政に関する資料について、公共の場所で市民が自由に閲覧できるようにするなど、最大限の便宜をはからなければならない。
(参加する権利)
第9条 わたくしたち市民は、川崎市の主権者として、市政に参加する権利を有する。
2 市長および市議会は、法令に定める審議会等のほか公聴会その他各種集会を開催するなど、市民が最大限に市政に参加できるよう配慮しなければならない。
3 市民主権と参加の原則に基づき、市政に関する調査・研究・審議等を行なう市民の会議を設置することができる。
4 市民は、有権者総数の3分の1以上の者の連署をもって市政上の問題につき、市長に、住民投票を行なうよう要求することができる。
(市民の義務)
第10条 わたくしたち市民は、普通教育の義務、勤労の義務、納税の義務および市から提供をうけるサービスに対して負担する義務等を、市民としての自覚のもとに、誠実に履行しなければならない。
(市民の責務)
第11条 わたくしたち市民は、市民に保障された自由と権利の乱用をいましめ、権利の行使にあたっては、つねに市民全体の福祉を配慮しなければならない。
2 わたくしたち市民は、近隣相互、地域社会および全市の市民の利益を配慮しあいながら、快適な市民生活を営める都市づくりをすすめるようつとめなければならない。
3 わたくしたち市民は、共同生活の規律を守り、公共の場所または施設等を全市民の共用の財産として清潔に保持し、大切にあつかわなければならない。
4 わたくしたち市民は、相互の人格を尊重し、よき市民としての栄誉と誇りをもって行動するようつとめなければならない。
5 わたくしたち市民は、世界に窓をひらく川崎市の一員として、広い視野と良識をもって、国際的連帯の推進につとめなければならない。
(事業者の社会的責任)
第12条 すべての事業者は、その事業活動により市民の健康・生活その他の良好な都市環境をおかすことのないよう、みずからの責任と負担において必要な措置を講じるとともに、市の施策および都市づくりに積極的に協力しなければならない。
(市外からの通勤・通学者等)
第13条 川崎市外に居住し、市内に土地、建築物等を所有する者、市内に通勤・通学する者および市の公共の場所または施設を利用する者等は、法令に定める例外を除き、この憲章の適用をうける。
 
第2編 「人間都市」川崎の創造(都市づくりの基本構想)
第3章 川崎市の未来像
(未来の理想像)
第14条 わたくしたち市民は、次のような「人間都市」川崎の未来の理想像を目標とし、個性ある「市民のふるさと」を創造する。
@すべての市民が、平和のうちに明るく生活できる「平和都市」
A自由な市民の積極的参加と協力に基づく、活気あふれる「自治都市」
B人間性豊かで、互いに自由と人格を尊重しあい、気楽な市民生活のできる「庶民都市」
C市民が生活水準の向上と地域社会の発展をめざし、いきいきとして働くことのできる「勤労都市」
D豊かな自然の恵みを享受し、安全で快適な生活の営める「環境都市」
Eすべての市民の安定した生活と心身の健全を、暖かい連帯で築きあげる「福祉都市」
F歴史的な伝統と近代的な文化の調和した、個性とうるおいのある「文化都市」
Gすべての都市機能の調和と均衡のとれた、世界に窓をひらく「総合都市」
(未来像実現への努力)
第15条 わたくしたち市民は、総意と英知を結集して、未来の理想像の実現につとめる。
2 市は、市民の自主的な意欲と連帯に基づいて、生活優先の市政を実現するとともに、理想の人間都市をめざして最大限の努力をはらわなければならない。
3 市民および市は、この未来像実現の過程において、つねに真理と社会正義の理念に立脚し、市民全体の利益の増進をはからなければならない。
(川崎市のシンボル)
第16条 わたくしたち市民は、「市民のふるさと」を象徴する市旗・市き章、植物および動物等を川崎市のシンボルとして定める。
 
第4章 市民の生活
(生活権)
第17条 すべての市民は、住生活、勤労生活、消費生活およびレクリエーション等すべての生活の面において、人間性豊かな生活を営む権利を有する。
(住生活)
第18条 すべての市民のために、健康で文化的な生活の営める住居が確保されなければならない。
2 住宅問題解決の第一次的責任は、国にある。市長および市議会は、国等に対して、できるかぎり大量の資金を市もしくは市民に提供し、また良質かつ低廉な住宅を供給することを要求し、それらを実現させるようつとめなければならない。
3 市長および事業者等は、生活環境の整備に充分な配慮をはらいつつ、住宅計画をすすめるようつとめなければならない。
(勤労生活)
第19条 すべての勤労者のために、安全で快適な勤労条件と福祉施設が確保されなければならない。
2 事業者は、良好な労働環境の整備および勤労者の福祉を向上させるための各種施策について、充分な措置を講じなければならない。
3 市長等は、事業者が行なう前項の措置を促進するとともに、企業環境と体質の改善・近代化の促進、その他中小企業者の生活と経営を安定・向上させるための各種施策について、必要な措置を講じなければならない。
4 市長等は、農業基盤の整備をはじめ、農業者の生活と経営を安定・向上させるための各種施策について、必要な措置を講じなければならない。
(消費生活)
第20条 消費者の利益の擁護・増進のため、日常の消費生活の安定および向上が確保されなければならない。
2 事業者は、商品およびサービスの提供について、消費生活を不当にそこなわないよう、つねに適正な措置を講じなければならない。
3 市長および市議会は、消費生活の安定と消費者保護のため、流通機構の改善・公共料金の適正維持、事業者の監視等の措置に必要な権限の移譲その他を国等に要求するとともに、市民の協力をえるなどして、必要な施策の推進につとめなければならない。
4 わたくしたち市民は、みずからすすんで消費生活についての知識を深め、自主的・合理的に行動するとともに、消費生活の安定および向上のための施策に積極的に協力するようつとめる。
(レクリエーション)
第21条 すべての市民のために、いきいきとした勤労生活と人間性の伸展に必要な休息および健全なレクリエーションの機会が確保されなければならない
2 市長等は、市民すべてが身近かなところで、つねに気軽に利用できるレクリエーション施設の整備と空地等の場の確保につとめなければならない。
 
第5章 市民の環境
(環境権)
第22条 すべての市民は、生命・財産の安全と健康な心身を保持し、快適な生活を営むための良好な自然環境および生活環境を享受する権利を有する。
(環境の確保)
第23条 良好な都市環境は、自然と人間活動との健全な調和のなかで、市民の健康で快適な生活を確保するものでなければならない。市長等、事業者および市民すべてがあらゆるをつくしてその実現をはかり、これを将来の市民にひきつぐ責務を負う。
2 市長は、良好な環境の確保のため、都市環境を構成する人口の適正規模、空気、水、土壌等の諸条件についての科学的、合理的基準のもとに、基本的かつ総合的な施策を策定し、これを有効適切に実施するようつとめなければならない。
3 わたくしたち市民は、良好な環境保全に関する意識を高め、地域の良好な環境の確保につとめるとともに、市長その他の行政機関が実施する施策に協力する。
4 市民は、事業者が良好な環境をおかすおそれがあると認めた場合において、これを市長に通報し、善処を求めることができる。市長は、その必要を認めたとき、事業者に良好な環境をおかすことのないよう、事業者の責任と負担において、適切かつ必要な措置を命ずることができる。
(公害の防止)
第24条 すべての市民は、良好な環境を脅かすあらゆる公害から解放された健全な生活を営む権利を有する。
2 わたくしたち市民は、総力をあげて公害を発生させないようつとめるとともに、きびしく公害を監視し、その防止・絶滅のため、あらゆる努力をはらう。
3 事業者は、その事業活動の結果生ずる公害によって、市民の健康と福祉を阻害しないよう、公害防止と被害者救済のため、万全の措置を講じなければならない。
4 市長等は、公害から市民を守るため、予防および規制に関するあらゆる施策手段を講じるとともに、近隣自治体とも協力して、公害の防止・絶滅をはかり、国等に対して公害対策の強化を要求し、その他必要な措置をとらなければならない。
5 市長は、公害についての情報、資料を市民に公表しなければならない。
(防災)
第25条 すべての市民は、あらゆる自然災害および都市災害から守られなければならない。
2 市長は、あらゆる災害に備えて市民の安全を確保するため、すべての行政および計画の前提として、可能なかぎりの措置を優先的かつ積極的に講じるとともに、防災行政の総合的・一元的組織化をはからなければならない。
3 わたくしたち市民は、市長の行なう防災措置について積極的に協力するとともに、つねに地域社会の安全のために、災害の防止克服につとめる。
(交通環境)
第26条 良好な交通環境は、人間尊重の見地にたって、交通諸機関のあり方について安全・円滑・快適性の確保をめざすものでなければならない。
2 市長および市議会は、良好な交通環境を確保するため、都市計画等の面においてつねに充分配慮するとともに、車その他の交通機関の通行規則等に必要な権限の委譲を国等に要求し、かつ関係行政機関とも協力して必要な条件整備につとめなければならない。
3 市長等は、交通事故の防止・絶滅、交通事故被害者の救急医療体制と救済対策の強化のため、関係方面との協力体制を確立するとともに、あらゆる可能な措置を講じなければ
ならない。
4 わたくしたち市民は、交通の安全・円滑・快適性を確保するため、つねに交通道徳を守り、市長等とともにあらゆる努力をはらう。
(衛生環境)
第27条 市長等は、良好な環境衛生の維持向上をはかるため、上水道の安定供給と全市普及、河川、下水道施設の完全整備および廃棄物の衛生処理等に万全の措置を講じなければならない。
2 わたくしたち市民は、前項の市長等が行なう措置について積極的に協力するとともに、みずからの土地、建築物、動物、樹木および廃棄物を適正に管理または処分し、その他良好な環境衛生の維持向上につとめる。
(日照権)
第28条 すべての市民は、日照障害から守られなければならない。
2 長等および建築主等は、近隣市民の生活環境に支障をおよぼさないよう日照障害防止のため、必要な措置を講じるようつとめなければならない。
(自然の破壊防止と緑化)
第29条 わたくしたち市民は、人間を含む動植物をめぐる自然の生態系および生育環境の破壊が、人間の生存にかかわることを充分認識し、人間らしく生きていくための不可欠の自然環境の保全と復元・育成についての意識を高め、緑豊かな都市の実現に全力をあげる。
2 市長等は、全市緑化、河川の整備等を推進するなど、自然環境の破壊防止のための規制措置および保全と復元・育成のための措置を講じるようつとめるとともに、その実現に必要な行政の総合的・一元的組織化をはからなければならない。
3 事業者は、前2項の市民および市長が行なう措置および施策について積極的に協力しなければならない。
(美観の保持)
第30条 市民および事業者は、風格と魅力あるふるさとづくりのため、市長の行なう施策に協力するとともに、市街地およびその周辺における景観を積極的に維持増進するようつとめなければならない。
2 市長等は、美観および風致を害する屋外広告物の表示掲出等の行為がなされないよう、つねに適切な措置を講じなければならない。
 
第6章 市民の福祉
(保健・福祉権)
第31条 すべての市民は、保健および福祉のための積極的な配慮のもとに、健康で文化的な生活を営む権利を有する。
(保健・福祉の保障)
第32条 すべての市民は、適切な保健サービスのもとで、疾病を予防するなどみずからの健康を維持するようつとめるとともに、必要に応じ完備した医療制度によりすぐれた医療サービスをうけ、また社会復帰のための措置がうけられるよう配慮されなければならない。
2 心身に障害のある市民および社会的に弱い立場にある市民は、明るい希望と生きがいのある日常生活を安心して営めるよう、積極的に配慮されなければならない。
3 前2項の保障に関する第一次的な責任は、国にある。市長および市議会は、国に対して積極的に保健・福祉制度等の充実改善を要求するとともに、関係行政機関および民間機関事業者等と提携して、市民のしあわせを守る保健と福祉等について、必要かつ具体的な各種の措置を講じるようにつとめなければならない。
(児童・母子福祉)
第33条 すべての児童は、よい環境のなかで充分な愛護と育成をとおして健康に育てられ、豊かな人格が形成されるようみちびかれる。母親の健康は、児童がすこやかに生育する基盤として保護されるとともに、とくに母子(父子)家庭については、その福祉が保障されなければならない。
2 市長等は、すべての乳児、幼児、児童、妊婦および母親が、無料で健康診断や必要な指導と措置をうけられるようにするなど、母子の健康が充分に保障されるようつとめなければならない。
3 市長等は、保育所、母子福祉センターなど、児童・母子福祉のための各種施設の整備拡充、その他必要な施策の推進につとめなければならない。
(老人福祉)
第34条 すべての老人は、社会のなかで孤立化することなく、市民から大切にされ、明るく生きがいのある生活を保障されなければならない。
2 市長等は、老人の健康診断と医療の無料化の拡大、再就職の機会の拡大と職業あっせん、老人福祉センターなど老人のための各種施設の整備拡充、その他必要な施策の推進につとめなければならない。
3 市民および市長等は、ねたきり老人やひとりぐらし老人など、とくに恵まれない境遇にある老人に対して暖かい手をさしのべるようにつとめなければならない。
(心身障害者福祉)
第35条 すべての心身障害者は、暖かいいたわりと深い理解によって、孤立と疎外および差別から守られるとともに、その生活が保障されなければならない。
2 市長等は、心身障害者が障害の程度に応じて、適正な公費負担のもとに充分な保護と治療をうけ、必要に応じて社会復帰のための能力回復がはかられ、教育および勤労の機会がえられるよう適切な措置を講じることにつとめなければならない。
(公害・難病被害者等の救済)
第36条 市長および市議会は、公害・難病被害者および被爆者等が医療と生活の面ですみやかに充分に救済されるよう、適切な措置を国に要求するとともに、その他必要な施策を積極的に推進しなければならない。
(精神衛生・成人衛生)
第37条 市長等は、市民の精神衛生および成人衛生を重視し、疾病の予防、早期発見、早期治療および社会復帰のため、公費負担の拡大をはかるなど、施設の整備、必要な施策の推進につとめなければならない。
(公衆衛生・地域医療)
第38条 市長等は、公衆衛生の向上・増進のため、保健所機能の体系的充実をはかり、市民および地域の需要に適合した総合的・機能的保健サービスの充実につとめなければならない。
2 市長等は、市民すべてが健康保持に必要な医療サービスをうけられるよう、市立病院その他の医療機関相互の機能分担と協力関係を明らかにするとともに、医療の機能的・地域的体系化の推進につとめなければならない。
(医療保険制度)
第39条 市長および市議会は、市民すべてが安心して充分な医療がうけられるよう、医療保険制度の改善充実を国に要求するとともに、医療関係者の協力を求め、給付内容の改善等、必要な施策の推進につとめなければならない。
(生活保護)
第40条 市長および市議会は、生活に困窮し保護を必要とする市民のために、生活保護の最適化を国に要求するとともに、生活の自立と安定を促進するよう適切な措置を講じなければならない。
 
第7章 市民の文化
(文化・教育権)
第41条 すべての市民は、川崎市の歴史的伝統と近代的文化を統合した個性ある文化を創造し、かつ享受する権利を有する。
2 すべての市民は、その能力に応じて、ひとしく教育をうける機会を充分に保障される権利を有する。
(文化環境の保全)
第42条 郷土の歴史的・伝統的環境、有形・無形の文化遺産その他の文化環境は、市民の文化創造の糧であり、将来の市民に大切につたえられなければならない。
2 すべての市民および事業者は、市長等とともに文化の保全措置を積極的に講じる責務を負う。
(創造的文化社会)
第43条 わたくしたち市民は、つねに個人の人格、自由および権利を尊重しつつ、互いに文化創造のよろこびをわかちあい、人間味あふれる民主的地域文化を発展させるとともに、市民の連帯意識にささえられた風格と魅力をもつ文化的都市社会を創造するようにつとめる。
2 市長等は、市民すべてが日常のくらしのなかで、自由な個性ある文化を享受し、かつ創造発展させるために、市民相互の交流の場として文化施設、スポーツ・レクリエーション等の施設の整備拡充をはじめ、必要な各種条件の整備につとめなければならない。
(幼児教育)
第44条 市長等は、幼児が心身とも健全で情操豊かな市民として成長するよう、保育所・幼稚園の整備拡充をはじめ、必要な施策の推進につとめなければならない。
(学校教育)
第45条 市民は、学校教育をうけもつ教師とともに、あすをになう市民を教育する自由と責任を有する。
2 市長等は、すべての市民に一貫した学校教育がひとしくゆきわたるとともに教育行政が民主的に運営され、教育に必要な諸条件が整備されるよう、充分な措置を講じることにつとめなければならない。
3 義務教育については、無償の原則が、実質的に保障されなければならない。
(青少年施策)
第46条 市長等は、青少年の創造的な人格の形成と自立的な市民意識醸成のため、自主的活動を促進する場の提供等、必要な施策を推進するとともに、青少年行政の総合的・機能的組織化をはかるようつとめなければならない。
(市民教育)
第47条 すべての市民は、みずからの教養を高め、国際的視野をもって個性豊かな文化の創造に参加するため、自己教育の権利と義務を有する。
2 市民教育は、市民の多様な要求にこたえ、家庭、職場、地域社会その他の場であらゆる機会を通じて積極的に推進されなければならない。
3 市長等は、市民教育の積極的充実および各種文化活動の自主的展開に必要な施策の推進につとめなければならない。
 
第8章 都市の建設
(都市建設の原則)
第48条 「人間都市」川崎の建設は、人間尊重と民主的平等の原則に立脚して、長期的観点から科学的・体系的な総合計画を樹立し、近隣自治体との広域協力および自治権の拡充をはかりつつ、先導的に実施していくものとする。
(都市建設の基本方針)
第49条 川崎市の都市建設は、市域の狭長、横断交通による分断および工業機能の巨大集積等の立地的・機能的特性を考慮し、次の方針にそってすすめるものとする。
@住居、職場、レクリエーションおよび交通通信等の都市機能を人間中心に一体的システムとして再編し、健康・安全・利便・快適性および文化性のある地域的生活が営めるよう整備する。
A市民の地域的生活の基礎単位である区を中心とした地域完結機能の整備拡充をはかるとともに、全市的にみて有機的統合性をもつ一体的都市機能の強化充実をめざして計画する。
B川崎市をとりまく周辺との関連を考慮しつつ、中枢管理機能および国際的機能を積極的に発展させる。
(土地利用計画)
第50条 川崎市の土地利用計画は、都市建設の基本方針にしたがい、民主的手続きに基づき、人間と自然の融合をはかりつつ秩序ある発展を誘導するよう配慮されなければならない。
2 市長等は、できるかぎり緑地・空地を確保しつつ、各地域の条件に応じた土地利用の純化と効率化をはかるため、規制その他適切な措置を講じなければならない。
(総合計画の公表)
第51条 市長は、都市建設の総合計画の内容とその目標実現のための具体的プログラムをつねに明らかにするようつとめなければならない。
(産業経済)
第52条 市民生活の基盤としての産業経済の構造は、豊かで快適な市民生活の確保を前提とし、公害のない、しかも均整のとれた近代的なものとしなければならない。
(開発・再開発)
第53条 市長等は、市街地の開発または再開発が、保全すべき自然環境と調和し、土地利用計画等に合致するよう適切な措置を講じなければならない。
2 開発または再開発の結果もたらされた開発利益は、公共的に還元されなければならない。
3 市長は、開発または再開発を行なう事業者等が市の定めた開発の基準にしたがい、かつ公共公益施設等についての適正な負担をするよう指導しなければならない。
(市民施設)
第54条 市長等は、市民相互の交流の活発化と生活向上のため、最適なコミュニティーの圏域のなかで市民が利用する福祉・文化・教育等の施設について、地域的かつ体系的な配置と整備が行なわれるようつとめなければならない。
(交通体系)
第55条 市長等は、市民の日常生活および積極的な都市活動に必要な手段として、大衆交通機関、その他の交通施設が機能的・体系的に整備されるようつとめなければならない。
2 市長等は、市民生活における安全交通を確保するため、市民施設の整備と有機的に組合わせて歩行者道路等の整備が行なわれるようつとめなければならない。
3 市長および市議会は、市民のための総合的交通体系の整備強化にあたって、公営交通の役割と分担を位置づけるとともに、関係事業主体との提携を強め、さらに国等に対し交通行政権の大幅な移譲と新しい交通手段の開発を可能にする強力な財源措置を要求し、市民の足の確保と経営の健全化をはからなければならない。
 
第9章 市の役割と責務
(市長等の役割と責務)
第56条 市長等は、つねに市民の意向を適切にとらえ、主権者としての市民が行なう都市づくりを、その総意にしたがって方向づけるとともに、これを積極的に推進し誘導すべき役割と責務を負う。
2 市長等は、市民全体の奉仕者としての意識に徹し、創意と情熱をもって、すべての市民のための民主的な市政の実現に総力をあげなければならない。
(行政機構の民主化・近代化)
第57条 市長等は、市の行政機構が、市民からの多様な要求や建設的提案および各行政部局にまたがる問題等に、迅速かつ総合的に対応できるよう、つねに配慮しなければならない。
2 市長は、市民サービスの向上をはかるため、各区の特性に合致した行政を総合的に運営するようつとめなければならない。
(自治行財政権の確立)
第58条 市長等は、自治行財政権を確立するため、市の行財政の状況について市民の理解を深めるとともに、市民等と一体となって、国と自治体の分担事務の明確化およびそれにともなう財源の再分配をはかるようつとめなければならない。
 
第3編 最高性・改正
第10章 改正
(憲章の改正)
第59条 市長は、この憲章の改正について、有権者総数の3分の1以上の者の連署をもって住民投票を行なうよう要求があった場合は、市民の意見をきくため住民投票を行なう。
 
第11章 最高条例
(憲章の最高性)
第60条 この憲章は、川崎市の最高条例であって、市長等および事業者等は、市民とともにこの憲章を尊重し擁護する義務を負う。
 
附則
この憲章は、昭和 年 月 日から施行する。